
在宅訪問薬剤師に興味がある方から、
「訪問では何を見ているんですか?」
「薬歴にはどんなことを書いているんですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん薬局によって記録方法は様々ですし、薬剤師によって着眼点も異なります。
今回は、あくまでも私自身が普段の訪問で意識していることをご紹介します。
薬歴を書くために患者さんを見るのではなく、患者さんをしっかり見た結果として薬歴へ残す。
私はそんな気持ちで毎回訪問しています。
まずは体調の変化がないか確認する
訪問すると、まず最初に確認するのは前回訪問から体調に変化がなかったかということです。
「お変わりありませんか?」
そんな何気ない一言から訪問が始まることが多くあります。
実際には、
「特に変わりないよ。」
という返事がほとんどです。
しかしそれが一番安心できる瞬間でもありますね。
一方で、
「少し頭痛が続いていてね。」
「最近ちょっと咳が出るんだ。」
「何となく食欲がないかな。」
そんな小さな変化を教えて下さることもあります。
在宅医療では、大きな異常だけではなく、「いつもと違う」という小さな変化を見逃さないことがとても大切だと感じています。
服薬状況を確認する
これは外来薬局でも大切な確認項目です。
薬はきちんと飲めているか。
飲み忘れはないか。
副作用で困っていることはないか。
ただ、在宅では患者さんの薬を実際に確認できるため、言葉だけでは分からないことも見えてきます。
「ちゃんと飲んでいますよ。」
とお話しされていても、残薬を確認すると飲み忘れが続いていることがあります。
そんな時も責めるのではなく、
「どうして飲みにくかったのでしょう?」
「何か困っていることはありませんか?」
と理由を一緒に考えるようにしています。
服薬状況を確認することは、患者さんを評価するためではなく、無理なく続けられる方法を一緒に探すためだと思っています。
バイタルサインや生活の様子を見る
在宅訪問では、薬だけを見ているわけではありません。
訪問した時に測定できるものは、できるだけ確認しています。
例えば、
・血圧
・血中酸素飽和度(SpO₂)
・脈拍
などです。
さらに、
・食事は摂れているか
・水分は飲めているか
・排便状況
・睡眠
・転倒はなかったか
など、生活全体の様子も確認します。
薬は生活の中で使うものです。
だからこそ薬だけを見るのではなく、その方の生活全体を見ることが在宅訪問薬剤師には求められていると感じています。
小さな変化でも医師へ共有する
在宅では、
「これくらいなら様子を見よう。」
ではなく、気になったことは早めに共有することを心掛けています。
例えば、
血圧がいつもよりかなり高い。
一週間近く排便がない。
風邪のひき始めのような症状がある。
頭痛を訴えている。
こうした変化があれば、クリニックへ情報共有を行います。
結果として大きな問題でなかったとしても、それで良いのです。
「何もなかった。」
という結果も、患者さんにとっては安心につながります。
小さな変化を早めに共有することが、重症化を防ぐことにもつながると考えています。
誰が見ても分かる薬歴を書く
私が薬歴を書く上で一番意識していることです。
在宅訪問は担当制であることが多いですが、有給休暇や急なお休みなどで、いつもと違う薬剤師が訪問することもあります。
その時に、
「前回はどんな様子だったのか。」
「何を確認すればいいのか。」
が薬歴を読めば分かるように書くことを心掛けています。
薬歴は、自分だけが分かれば良いメモではありません。
患者さんの情報をチーム全体で共有するための大切な記録です。
だから私は、
・なぜ医師へ報告したのか
・ご家族へ何を説明したのか
・次回訪問で確認したいこと
まで、できるだけ具体的に残すよう意識しています。
次に訪問する薬剤師が安心して患者さんのもとへ向かえるような薬歴を書くことも、在宅訪問薬剤師の大切な役割だと思っています。
まとめ
在宅訪問薬剤師の薬歴は、単に「薬を渡しました」と記録するためのものではありません。
患者さんの体調や生活の変化を記録し、多職種や薬局内で共有するための大切な情報です。
私は毎回の訪問で、
「今日は何か変わったことはなかったかな。」
という視点を大切にしています。
そして、小さな変化でも必要に応じて医師へ共有し、その経過を薬歴へ残します。
薬歴は、自分へのメモではありません。
患者さんを支えるチームへの引き継ぎ書だと私は考えています。
もちろん、薬歴の書き方や着眼点は薬剤師によって様々です。
今回ご紹介したのは、あくまで私が現場で大切にしている考え方です。
これから在宅訪問薬剤師を目指す方にとって、「こんな視点で患者さんを見ているんだ」と少しでも参考になれば嬉しいです。